医学データべ−スと出合って25

CTCラボラトリーシステムズ(株)顧問
摂南大(薬学部)講師        
角田 喜治(
10回生)

  今から25年も前のことですが、武田薬品工業在職中に、今日のMEDLINEに匹敵する高価な医学データベース(EMBase)を第1巻から毎年、副作用情報収集の情報源の一つとして、自社購入してもらうことにしました。当時、武田薬品もスモン事件の被告として訴えられていたことが、購入を決断した経営者の背景にあったと思います。そのときのユーザーは武田薬品と筑波大学だけでした。

 オランダから送られてきた最初の磁気テープの中身は相当ひどいものでしたが、何とか大型コンピュータでテープが廻るようになり、社内サービスがスタートしました。そのとき、ホットしましたが、その一方で欧米では大型商用データべ−スが出回ろうとしているのに、日本ではなぜこのようなデータベースがないのだろう?1956には日本でも国家レベルの科学技術情報センター(今日の科学技術事業団科学技術情報本部−JICST)が設立されているのに、そのような行政指導が行われないのはなぜだろう? という疑問を持ちました。
 当時は、データべ−スって何だ!なぜコンピュータから文献が出てくるんだ!といった質問がまだ出ていた時代でしたから、共同でコンピュータ可読のデータベースを作るという環境が日本には未だ育っていませんでしたので、私の疑問はそのままになってしまいました。でも、欧米では当時その環境作りが、フアクトデータベースも含めて、すでに着々と進んでいたようです。

 さて、パソコンやインターネットが発達しデータべ−スの定義が理解されるようになった今日ではどうでしょう? 共同でコンピュータ可読のデータベースを作るという環境がわが国に育ってきているでしょうか? 多くの人は育ってきていると思うと答えるでしょう