“一期一会”・・・・・この出会いを大切に

東京薬科大学 薬学部 岡田 弘晃  

(前九大薬友会関西支部長、17回生)

 関西支部の皆さん、お元気ですか?

 関東支部に移って2年になろうとしています。大阪では、九大卒の皆さんに大変お世話になりました。また、いろいろな方にお目にかかりました。頑張っているヒトも、たいへん頑張っているヒトも、何となく働いているヒトも、家庭に入られたヒトも、しかし、皆さんがやっぱり自分のアイデンティティーをもっておられて、ある一部では、気づかないまでもあの九大を卒業したという誇りをベースに生きておられることは事実です。

 ここ東京薬科大学薬学部に来て、もう間もなく2度目の卒業生を出しますが、院生を含めて毎年20名近くの学生が私の教室から巣立って行きます。  

テキスト ボックス:

 私の教室は製剤設計学教室という名前で薬剤学を教えていますが、東大の杉山教授、九大の澤田教授に次いで3番目の教室です。いま、図にあるように、粉末経肺投与剤の製剤設計、難溶性・難吸収性薬物の製剤設計、遺伝子薬の製剤設計を主に研究しています。いずれも、特許が取れるような新規性のある、実用性の高い結論を目的として学生と研究を進めています。当教室の院生(M1)山崎亜津子の小生像をカットとして添付しました。

 昨年、日本薬学会、東京薬科大学卒後教育、日本医療薬学会等で、「創薬を支える創剤」の話をしました。今の製薬企業でのトピックスはゲノム創薬で、ポストゲノム戦略でどのくらいの創薬標的が見つかるか楽しみです。画期的な創薬研究技術の進歩によって、すさまじい数の新薬候補化合物が自動合成機によって作り出されていますが、そのdrug-likenessを評価するのも薬剤学、すなわち、製剤設計学です。今では、探索研究段階でのdrug-likenessを、いかに効率よく速やかに評価するかが勝負の分かれ目で、in vitroあるいはin silicoのhigh-throughput assayの開発がグローバルスタンダードになっています。さらに、新しい製剤技術、新しいDDS(薬物送達システム)の創製(創剤)は、薬の医薬としての有用性を大きく向上させ、創薬を大きく支えています。

 私が、武田薬品から東京薬科大学に迎え入れられた一つの要因として、私のキーワード「いつまでも卒業生の母港(母校)でありたい。」という言葉だったそうです(ある審査教授曰く)。赴任した年から、当教室の卒業生で毎年一回開催されてきた「薬剤学研究会」を継承しました。この秋も、約70名の卒業生を迎えて卒業生の活躍ぶりをもとに、第20回目の研究会を盛会裏に開催しました。私が卒業生のアルバムに毎年贈る言葉として書いているのは「一期一会」です。今どうして、あなたが、私がここ東京薬科大学にいるのか、いろいろな事があってそうなったのですが、この新しい人達との出会いに、いつも感謝しています。もちろん、感謝される存在でありたいと思っています。昨日、今年4月から私の教室を選んでくれた、定員を超える数の18名の3年生が来室し、研究テーマを告げましたが、若い皆さんの眼に新たな生命の活力を感じることができ、たいへん幸せな瞬間でした。まだ、まったく不十分ですが、なんとか教育、研究、就職援護の歯車が動き出した感じです。

 昨年、秋に中国の中医研から一人女性研究員を迎えています。いま、ブラジル、インド、中国から多くの留学の問い合わせを受けています。昨年夏から、米国のあるベンチャー企業と共同研究をしていますし、正月早々、トロント大医学部の教授と共同研究の契約をしたところです。ご存知のように、製剤設計は企業のテーマと通じることが多く、いくつかの企業の方から共同研究の申し出を得ています。また、1月に今年度の上原記念生命科学財団の研究助成金を頂きました。新たな研究に向け、暗室を改造して細胞培養室を作り、製剤機器、分析機械などの充実を行い、研究に教育に気の休まるときはありませんが、自分が選んだ道、たいへん充実した毎日です。

 講義も大変です。一学年500名の学生がいますので、同じ講義を4回行います。ただ、昨年の秋にあるクラスで、今日で私の講義は終わりですと話したら、学生からいきなり拍手を頂きました。普通の講義でこのような光景は今まで見たことがないと、助手が驚いていました。どうしたことでしょう。出席は取りませんが、席はいつもほとんど埋まっています。私が話した所からのみ試験に出すと言ったのが効いたのでしょうか。

 いま、薬学部は6年制の実施に向けて大変です。昨今の、医療過誤の増加(?)に対して、医療薬学を基本にした薬学教育の重要性が叫ばれています。東京薬科大学は、122年の歴史を持ち、日本最古のそして最大の私立薬学校ですが、世の中への対応はたいへん遅れています。いま、私も委員をしていますが、教職員力を合わせて、大学大改革のシナリオを書いています。私の意見ですが、薬学全てのアイデンティティーを医療薬学に置くことを計画しています。“From bedside to bench”を合言葉に、平成16年から、疾患、患者、医療薬学をベースにした、医薬の適正使用(医療薬学科)、創薬(創薬学科)、基礎研究(生命薬学科)の3学科制になる予定です。来年度は、教務委員長ということで、この大改革の青写真をより現実化する大役が待っています。大学では、他に、病院・調剤実務実習、産学協同、知的財産権、広報委員など結構忙しい毎日です。

 昨年は、昭和43年卒の京都でのクラス会幹事を受けていたのですが、まったく余裕がなく、同じく幹事の三塩君のいつものいい加減さもあり、小生が東京に引っ越したこともあって実現できませんでした。この場をかりて同期の皆さんゴメンナサイ。今年は必ずやります。来年の春から、八王子鑓水(多摩ニュータウン)に住んでいますが、毎日、窓から富士山の頂きが見えます。今、真っ白に輝いています。日々、心を洗われる思いです。近くにお寄りの節はぜひお立ち寄りください。

 取り止めもなく書いてきました。まだ、いっぱい皆さんにお伝えしたい事がありますが今日はもう止めます。また、いつか何処かで、お会いし、お話できることを楽しみにしています。

 それでは、皆さんお元気で。