調剤薬剤師はこう期待する
 

永倉 正彦 

   

 私は定年退職後、病院の門前にある調剤薬局にパート薬剤師として勤務し6年になります。製薬会社の研究部門しか経験してなかったので、慣れるまで少々戸惑いました。薬局での主な業務は、先ず錠剤などのピッキング、シロップ剤の調製、軟膏などの混合、散剤の混合、一包化などの調剤業務があります。次に、調剤されたものの監査業務があります。調剤過誤がないように種々とチェックをするので重要な業務です。
 次は患者さんと相対して服薬業務をします。当薬局では電子薬歴を使用していますので、カウンターでパソコンの画面に書かれている前回までの薬歴のコメントを見ながら、患者さんと話をします。患者さんも十人十色でよく話をしてくれる人、話をしたくない人などさまざまで、臨機応変に対応しなければなりません。コンプライアンスが良くないのはなぜか、副作用は出ていないか、変わったことはないか等など訊くことはいろいろあります。服薬指導した薬剤師が話した内容を電子薬歴に入力します。
 当薬局では、医師が往診し処方された薬を持って患者さん宅を訪問し、在宅訪問服薬を行っています。家に上がって家族を交えて服薬指導を行うこともあるし、玄関先で家族と話すだけのこともあります。終わってお土産を頂くこともあります。その他にOTC薬、サプリメントなどの販売、在庫管理業務など種々ありますが、メインは調剤、監査、服薬業務です。
 さて、今の薬学部の実態を知らない状態で書きますので、認識不足もあるかもしれません。九大薬学部の学生は、卒業してすぐに調剤薬局に薬剤師として勤務する人はどれくらいいるのでしょうか。今でも大学院から研究職、製薬会社などのメーカー、病院薬剤師として勤務する人が多いのではないでしょうか。私の周囲は新卒で調剤薬局に就職する学生は、全員と言っていいくらい薬科大学(含む私立大学薬学部)卒です。今まで国立大の薬学部は合成・天然物、生化学、薬理、体内動態、製剤などが中心で研究者、創薬指向がメインで、薬剤師教育はメインでなかったような気がします。

 調剤薬局の薬剤師は服薬指導で、直接患者さんを相手にするので、薬学的知識と同時に医学・臨床的な知識がある程度は必要です。医者とお話が出来る程度の医学・臨床的知識があれば申し分ありません。薬剤師はこれからは益々、医療人として患者さんを相手にしているという自覚が必要になると思われます。

 来年から薬学部が6年制になるのを機会に、臨床も重視した薬剤師教育も多く取り入れ、九大から一人でも多くの学生が調剤薬局に就職し、活躍する時が来ることを期待するところです。